project:F 第五話



村民への現状報告を一通り終えた。
さて、残る一人はどんな反応をするだろう。

「リオン!」

村の隅の方、川の上流にお目当ての人物はいた。
――いや、人間ではないらしいが。

ティートが微笑みながらやって来ても、リオンの表情は変わらない。
ちらりと見た後、釣り糸に視線を戻した。

「あのさ、俺ら今度村おこしをやることになったんだ」

応える様子もないリオンを気にする風もなく、隣の石に腰掛けた。

「でさ、お前が前に住んでたところってどんなところなんだ?参考にしたいんだけど」

にこにこにっこり。
愛想のない態度に反発することもなく、楽しそうに接する人間は少ない。

「前に住んでいたところ?…はっ!お前に協力する義務などない」

リオンはティートが苦手だった。
その微笑みは、「純粋な好意ではない」というわけではないけれど。

例えば、そこにいるだけで、自然と人が集まってくる。
面白そうに話してる。
人を楽しませている。
けれど、決して中心にはならなくて。
一歩引いて、どこか冷静に観察していて。

笑ってるのに、暖かいのに。
ふと問いたくなる。

『おまえ、楽しいか?』

他人に対してこんなことを思うなんて、自分が自分ではないようだ。
リオンはティートが苦手だった。

「義務はなくとも権利はあるだろ?その権利を行使して欲しいんだけどなー」

一方ティートは、リオンを比較的気にいっている。

打てば鳴る太鼓のように、天邪鬼な人というのは逆に性格が読みやすい。
とてもとても、『いじりがいのある』種の人だった。

「どういう理由でボクが人間に協力しなければならないんだ。大体人間のせいであいつは――」

ほーら、これだから。

「そのセリフ、もう聞き飽きたよ」

セリフそのものには飽きても、その態度は何度見ても飽きない。
リオンには人を飽きさせないなにかがあって、そこが非常に興味深い。

「あのさ、リオン。お前この村のこと好きだろう?」

人を言いくるめるのは好きだ。
なんとなく賢い人になったような気分で、意味もなく勝者の気持ちを味わえる。

「はあ!?馬鹿を言うな!」

感情的になっては言い合いに勝てない。
大局を見渡さなければいけないだろう。
それを知っているのか知らないのか。
そこのところは分からないけれど、自分の挑発に簡単に乗ってしまうこの人はやはり興味深い。

最初から気になってはいたのだ。

こんなにも一人のことを想えるなんて、素晴らしいことじゃないか。
だがそれならどうして音色を集めようとしないのだろう。

一途だけど捻くれてて、本音を語れないくせに表面にはもろに現れてる、感情を隠せないこの人。

自分自身とは正反対で、気になって仕方がない。

「女神様が石になったのは、この村が好きだからだろう?だったらお前がこの村を嫌いなはずないじゃないか」

『もしも村が嫌いなら、村民が思いやりの心を失くしてしまったことなど、女神様はきっと気にも留めない。女神様の大好きな村を、女神様を大好きなお前が、嫌いなはずないだろう?』

全てを語らずとも、悟ってくれるだろう。

「大体、嫌いなら村に住まないよな。泉に、女神様の傍にいるよな」

最後に駄目押し。
愛しい愛しい存在の傍らにいたいと思うのが自然の摂理。

リオンはなにか反抗したくてたまらない様子だが、良い言葉が思い浮かばないようで。

「また聞きに来るから、何か考えといてくれな!」

去って行く後姿を見つめることしか出来なかった。
小さく舌打ちをして、再び釣り糸に視線を戻した。



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リオンと結婚したかった。
男主人公でも女主人公でもなんでも良いから結婚したかった……。



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