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マスターの作ったケーキを頬張りながら、シンとケティは相変わらず。 「――そんなわけでさ、俺も手伝うことになったわけ」 「うわー、凄いじゃない!」 自分のことのように喜んでくれる姿は、可愛い。 ケティは嘘をつかない。 それゆえ人を傷つけることもあるけれど、悪いと思えば素直に謝れる。 とても良い子だ。 「でもさ、見合いパーティ−なんてやったことも見たこともないんだよな〜。ケティなんか知らない?」 「うーん……」 頭の中を掻き回す。 難しいことは苦手なケティでも、恋する相手の相談事には積極的。 「公募とかは都会の業者さんに頼めば良いとしても、やっぱりパーティーなんだからこっちにも盛りあがれるようなことが必要よね」 「盛りあがれること、か。歌って踊って騒いで飲んで食って――」 「それよ!」 目を輝かせながら、ケティは立ち上がった。 「やっぱり美味しい料理が必要よね!よーし、私のスペシャルなケーキで会場のお客さんを魅了しちゃうわ☆」 ちょ、ちょっと待ってくださいケティさん。あなたにお話があります…! シンが口を挟む間もなく、ケティはケーキの構想を練り出している。 命がけで見合いをしたい人が、この世にいったい何人いることか。 宇宙はとても広くて、地球はその中のほんの小さな存在。総人口の単位は“億”なのだ。 夜空に輝く、数え切れない程の星を思い出しつつ、シンはケティの説得に時間を費やす羽目になってしまった。 ――そういえば、人が死んだら星になるっていうよな……。 バンダナの星マークに、彼はどんな思いを馳せているのだろう。 ■■■ ドアの前に立ち尽くすこと15分、レイフはようやく扉を開けた。 中に入ればそこには、聖母のような微笑み。 「あら。いらっしゃい、釣り人さん。今日はどのような本をお探しですの?」 「…今日は、その……」 口篭もるレイフに、マリアは思い出したように手を叩いた。 「この間はすみませんでした。あの後釣りに関する本も少しですが取り寄せたんですよ」 カウンターから出て、奥の方へ歩いて行った。 慌ててついていく。 「『上級者への釣り読本』、『幻のヌシを釣れ!』、『世界の魚伝説〜中世編〜』……どうでしょうか?」 にこやかに、けれど若干不安そうに、レイフの返事を待っている。 この村で釣りをするのは実質三名程度で、そのうちこのレベルの本を求めているのは一人だけ。 片方は釣りの腕がここまで達していないし、片方は釣り以外のことで忙しく本を読む暇がない。 自分のためにわざわざ取り寄せてくれた、その心意気が嬉しいではないか。 「…ありがとう。その、今日は魚に関する本を全て借りたいんだが……釣り大会の資料にするらしいんだ」 「ああ、それですか!父から聞いています。私も出来る限りお手伝い致しますわ」 楽しそうに、魚関連の本を取り出し始めた。 「昔のような、活気溢れる村に戻ってくれると良いのですけれど」 レイフは口数が多い方ではないが、決して少ないわけではない。 短い相槌で終わってしまうのは、『美人は苦手だ』からだそうで。 「釣り人さんはここに定住なさる予定はないのですか?」 愛想のない話し相手を気にする風もなく、マリアは話し続ける。 大人しいのと喋らないのとは全く別物だ。 「オラは、釣りが生き甲斐だから……」 望む返答が出来ない自分が少し悔しい。 まともに直視は出来ないが、ちらりと横顔を盗み見る。 笑っていた。 「それだけ一生懸命になれることがあるのは素晴らしいですわ」 それが最後の一冊だったらしく、分厚い本を数冊まとめて抱えた。 「では、持って行きましょう。ティートさんの牧場でよろしいでしょうか?」 「いや、オラが持つから――」 「一人じゃ重くて持てませんよ。お手伝いさせてくださいな」 そんな言い方をされては、断り難い。 素晴らしいのはマリアさんの方だ。 口が裂けても、言えそうにないけれど。 逃げ出したい気持ちを抑えて、レイフは残りの本を抱えあげた。 レイフとマリアは難攻不落も良いところだと思います。 |
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