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「まあ、その辺に座っといて。お茶でも淹れるから」 村長宅を出て、やってきたのはティートの牧場。 立派な動物小屋や広大な野菜畑とは打って変わって、未だに家は小さい。 家具はベットや整理棚、キッチンなど必要最低限。 その辺に座っとけと言われても……本当に床に座るしかないではないか。 二人の思いはさておき、ティートの脳内はフル回転していた。 人を呼び寄せるために重要なことや必要なもの。 それを調達する手段や有効活用法。 それから、今回の企画が無駄にならないために色々手を売っておいた方が良いだろう。 村おこしというのは、難しいもので。 人が住むところを変えるのはそんなに容易いことではない。 「とにかくさ、俺達三人だけじゃ何も出来ないだろ」 やかんに水とお茶の葉を入れ、火にかける。 作り置きの飲み物は切れていた。 あとで自分用のも作らなければ。 「メンバーがメンバーだから基本は釣り大会で行くとしても、それだけじゃ人は集まらない。村長のお見合いの案も盛り込もうと思うんだけど」 IHクッキングヒーターが欲しい今日この頃。 ガスコンロは点けるのに失敗するとガスが漏れて臭いのだ。 顔の周りを手でパタパタやっている人が約一名。心持ち臭さは和らぐ。 「…ティート、さっき反対し」 「この村の住民が餌になる必要性はないよな」 「ああ、お見合いパーティーの“現場”としてここを利用するだけで良いんだ」 シンの突っ込みは綺麗に流されて。 「……俺の存在意義って何だろう…」 へのへのもへじなんて書いちゃってまあ、イジけてしまわれた。 「でさ、シン」 『いつまでそんな隅っこでうちの床なぞってんだ?このやかんが目に入らぬか!?』 目だけでここまで語れるヤツも珍しいと思う。 こういうのには逆らわない方が良い。 湯気が出てきたやかんを見つめつつ、シンは大人しく向き直った。 「お前には見合いのメインを担当してもらいたいんだけど、どう?」 「…それは俺の釣りの腕がないからかよ?」 「それもあるけど、レイフが見合いのプロデュースなんて出来ると思うか?」 目だけ動かしてレイフを見る。 ……本人も自覚があるらしく、手をひらひら振っていた。 「ま、そういうことだから。釣り大会の方は初心者への指導とかしてくれな」 にっこり笑ってそう言われてしまっては、怒る気もおきやしない。 「それで、レイフは釣り大会の方をメインでやってくれるか?今までに出た大会の開催要項とか思い出して――」 ピーっと鳴る音色をしばし無視して、棚から大量の紙を取り出す。 「ぐちゃぐちゃで良いから詳細に書き出して。それから、魚についての資料をまとめて図書館で借りてきてくれ」 「オラの頭の中に入ってるが…」 「それを書き出すより借りた方が詳しいし速い。ああ、当日は上級者の相手な」 がちゃんと無駄に大きな音を立ててコンロの火が切られ、2つの湯のみに注がれた。 会釈をしつつ受け取ったそれは想像以上に熱かったらしく、シンは半ば涙目だ。 「…ティートは何をするんだ?」 「司会進行ぐらいしかやること残ってなくないか?」 人には面倒なこと押し付けといて自分だけ楽な分担…なんてことはないだろうけれど。 文句の一つも言いたくなる、こんなに熱いお茶は久しぶりだった。 「俺は当日の食料と寝床の確保と、各店への出店の要請とかしに行くかなー。それから全体を通しての具体的な実行プラン考えないとな。ある程度の予算はやっぱ欲しいから村長にも訊きに行かないといけないし、その配分方法とかも――」 ……ああ、それはオラじゃ出来ないな。うん。 ……先を見通した行動とか苦手だからな、俺。 ティートが全てを言い終える前に。 頑張れという一言が異口同音に発せられた。 「――それじゃ、今日はもう帰って良いよ。シンは三日以内に具体的な企画考えて来てくれな。レイフも書き出し作業完了させてくれ。本は早めに持ってきてもらえると助かるけど、まあいつでも良いよ。あと、年齢の若い協力者を募っといて。中年世代には俺のが顔利くから」 そう言われては出て行かないわけにもいかず、二人は家の後にする。 お茶、もう少し冷えてから飲もうと思ってたんだが……。 冷める前に追い出されちゃあなあ。ティートんちのお茶美味いから飲みたかったんだけど。 床に置かれ冷たくなったお茶が、家主に気がつかれるのはもう少し後のこと。 お茶で時間の経過を表したかったのですが…失敗。 |
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