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テオドールは頭が重かった。 胃も痛かった。 彼としては画期的なアイディアであった『わくわく牧場プラン』により二人の住民が移住してきたものの、相変わらず村の現状は変わらない。 過疎地域として登録された村、花の芽村。 過疎が悪いことだとは思わない。 確かに人口が少なければ産業は活発にならず、集落崩壊の危険性もあるが。 のびのびと。地域に密着した形の生活環境は、人を育てる。 Love your neighbor as yourself. ――隣人を愛せよ、というやつだ。 当たり前のことが当たり前に行われている。 なんと素晴らしい土地なのだろう、村長であることは自身の誇り。 このことを、もっとたくさんの人に知って欲しい。 そして欲をいえば、ここに定住し新しい世代を。 これはエゴなのだろうか。 他人の幸福など、自分では定義できないものなのに。 だが近今は『物質』でなく、『心』の豊かさが求められるようになってきているのも事実。 ここには確かに人々の望みが詰まっているのだ。 はなのめがでるむら。花の芽村。 心豊かな人ならば、きっと花は咲くだろう。 そしてその人は風に乗り、広がっていくのかもしれない。 例え村を離れても、心の故郷は唯一つ。 街に行くなとは言わない、いつか帰って来ることを願おう。 桜さんざめく春。 若葉は柔らかく、豊かな台地に育まれ日に日に成長する姿は逞しい。 太陽煌く夏。 潮風に包まれた体は暑さにもめげず、黒に咲く花は美しい。 果実熟れる秋。 山は鮮やかに染まり、突き抜けるような空は時に寂しさをもたらす。 雪舞い踊る冬。 湖が凍りつく様は幻想的で、洞窟は光り輝き懐も潤う。 「四季を肌で感じられるこんなに素晴らしいところなのに、どうして人はやって来ないのだろうねえ……」 机にひじを着きため息一つ。 肩を落とす父を見て、残念そうに一般論を述べる。 「都会の方が生活は便利ですもの。四季折々の美しさだけでは定住人口の増加は難しいでしょう」 気の利いたことの一つでも言えれば良いのだが、言ったところで現状は変わらない。 「『季節の美しさだけでは駄目』か……ああ!そうだ!」 名案が思いついたとばかりに勢いよく飛び上がる。 瞳は輝き、生きていた。 「つまりは、一年を通して何か楽しいことがあれば良いんだね!」 どうして今まで思いつかなかったのだろう。 うん、我ながら良いことを言うじゃないか。 さっそく準備をしよう! 親の背を見て子は育つ。 自宅をせわしなく駆け回り始めた父を眺め、マリアは紙を取り出した。 さらさらと走り書きをし、そのままタンスに放り込んでおく。 『マイナスにマイナスを足してもマイナスにしかならないが、マイナスとマイナスを掛けるとプラスになる』 足し算から掛け算へ、数の面白さと可能性を感じた幼き頃。 思考も似たようなものなのかもしれない。 大胆な発想の転換が吉と出ることもあるだろう。
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